銀河の雫
一面に広がっていた漆黒の夜空は、夜が明けるように、淡い照明の光に戻っていった。
上映が終わり、観客が出口に向かって動き出す。
促されるがまま、シートから立ち上がった。
エントランスから出ると、ふたりで空を見上げる。
大粒の雨粒が落ちてくる。
「止みそうにないね。駅まで車で送るから」
「でもご迷惑じゃ」
所長と目が合う。
「遠慮しないで。ほら、まだ空もこんなだし」
もう一度、空を見上げた。
さっきまでしとしとと降っていた雨は、勢いを増していた。
「すみません、ではお言葉に甘えさせてもらいます」
少し戸惑いながら、助手席に乗り込む。
「先ほどのお話、まだ理解が追い付いていないんですけど……」
運転席の横顔に問いかける。
そこに、あの日のお見合い相手の面影はなかった。
「……そういえば、あの日は君が運転してくれて、南部家敷に行ったよね?」
「そうですけど……あれって……」
「……俺だけど?」
「はぁ……」
「でもあのとき、電車通勤だから運転は苦手だって」
「あの日は……妹に風邪を移されてね。強い風邪薬を飲んだから運転できなかった」
「……確かに、咳き込んでましたね」
ハンドルを握り、前を見たままでうなずく。
「あの後、風邪移ってなかった?」
「お気遣いありがとうございます。私は大丈夫だったと思います」
「なら、良かった」