銀河の雫

フロントガラスに大きな雨粒がぶつかっては音を立てる。

それをワイパーがかき消すのをぼんやりと見つめた。

信号が赤になる。

「けど、冷泉病院のご長男って……院長先生は苗字も冷泉のはずじゃ……」

「俺、小四までは青森の母親の実家で育ったんだ。ずっと母方の日向姓を名乗ってる」

「そういうことですか……すみません、まだ信じられなくて」

「まぁ無理もないよね」

「はぁ……」

でも待って。

その後はどうしたんだっけ?

あの後、東京に戻った私になんの連絡もなかったはず。

やっぱり記憶の通り、お見合いは断られたってことだよね。

車が駅のロータリーに着いた。

「ここでいい?」

「はい、ありがとうございました」

シートベルトを外し、助手席のドアを開けた。

「じゃあ……明日、会社で。お疲れ様」

「はい」

運転席をのぞき込み、会釈をすると、傘を広げた。

「月浦さん」

呼ぶ声に振り返る。
運転席のウインドウが開いた。

「君はひとつ思い違いをしてる」

「……はい?」

「断ったのは俺じゃない」

「……えっ?」

私は自分を指差した。

「……私?」

所長はうなずくと、笑顔で軽く手を振り、そのまま走り去った。

えっ、私が断った?

何も思い出すことが出来なかった。



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