銀河の雫


目覚めの悪い朝だった。

カーテンを開けると、空はどんよりしていて今にも泣き出しそうだ。

せめて天気が良ければ、少しは気も晴れるかも知れないのに。


重い足取りで駅へと向かう。

派遣元のオフィスは、勤務先の目と鼻の先にある。

ビルを見上げてため息をつく。


辞めてしまえば、もうなにも悩まなくて済む。

きっと、身の丈に合わない仕事だったんだ。

大手の派遣事務なんて、背伸びをし過ぎていた。

なんだか全てのことが、とても億劫に思えた。



パーテーションで仕切られた小部屋に通された。

しばらくすると、渡辺さんが入室してきた。

更新面談で先日、会ったばかりだった。

あのときは「月浦さん、頑張ってますね」と話してくれたっけ。

事態が事態なだけに、お互いに顔色も冴えず口数も少ない。

「事実確認のために聞き取りをしたいのですが、よろしいですか」

「……はい」

ノートパソコンを開いて質問が始まる。

「メール送信時は、職員さんにダブルチェックしてもらうことは、月浦さんも知っていましたか」

「はい」

「派遣社員だけの時間帯、独断で月浦さんがメールを送信してしまった。それで間違いないですか」

「……はい」

「……それは、なぜですか?」

「……特に……理由はありません」

「急ぎだったとか、うっかりとか、なんかあるでしょう?」

「……はい……うっかり……してたんだと……思います。多分」

「そうですか、分かりました」

しばらく沈黙が流れた。

キーボードを打つ、カタカタという音だけが狭い部屋に響いた。

「所長さんが戻られましたら、具体的にお話を進めていきます」

「……はい」

胸がぎゅっと苦しくなる。


あんなに毎日、遅くまで残って指導してくださったのに。

申し訳なさでいっぱいになる。

もう、あんな風に一緒に働くこともできないんだ……

「……おそらく次の契約更新の話は白紙になると思います」

「今月いっぱいということでしょうか」

「おそらく、……そうなるかと思います」

「……分かりました」



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