魔法がなくても
ただ今は宙くんのためとはいえ、私の前で言ってしまったことにまずい、という空気が走ったんだと思う。
乃蒼は口を両手でおさえてしまって、泣きそうだ。
「大丈夫だよ。気にしないで。私は白ちゃんとツララがいるもん」
笑って見せれば、乃蒼や四たちの表情はどこかホッとしたように感じた。
「なら次はわたしが教えようか?」
桜がにこりと私に笑いかけて立ち上がる。
「お、お願いします!」
「桜、きびしくやれよ。ビシバシ!」
「きびしくしたからってどうにもなりませんよ。どうにかなるなら皆きびしくするでしょう」
あん?、正論でしょう、と小柄なシエルと一番高身長の四がバチバチとにらみ合いをはじめ、乃蒼からのいたずら魔法によって、三人は辺りを走り始めた。
「えっと、こっちはこっちで練習しておこうか。紫翠くん」
「……お願いします」
走り回る三人と、目の前の桜たちの姿をながめながら、私は家の方から走ってくる白ちゃんとツララに手を伸ばした。