愛してるの期限が切れる前に
 子どもを危険な目に遭わせるなんて、母親失格だ。

「花、ごめん……っ。ママがいけなかった」
「ままぁぁ――っ」

 首にしがみついてきた花を思いきり抱きしめた。
 体調の悪さから、注意が散漫になっていたのだ。いつも道を渡るときは注意できていたことが、できなくなっていた。車通りが少ない道だからと油断していたせいもある。そのせいで花を危険な目に遭わせてしまったのだ。
 ほんの少しの油断が取り返しのつかない未来へ繋がる。
 百花はあの一瞬、人生の分かれ道に立っていたのだと思い知らされた。

「無事でよかった……っ」

 押し寄せる激しい後悔と、無事だった安堵に涙が止まらない。

「……もも」
「――っ!?」

 そんな百花に、背後から強ばった声が百花を呼んだ。
(え?)
 びくっと肩を奮わせて男を振り仰げば――。

「――な、……んで――」

 予想だにしていなかった人物に、百花は茫然自失となった。
 百花たちを助けて下敷きになっていたのが、玲桜だったからだ。
 四年ぶりに生で見る実物の玲桜は、想像以上の破壊力があった。
 昨日見た雑誌通りの造形……いや、写真で見るより頬がシャープだ。加工前より生身の方が美しいのだから、なんて恐ろしい人だろう。
 いつもはカラーコンタクトで隠している目の片方だけ、モルフォ蝶色になっている。転倒した拍子にコンタクトが取れてしまったに違いない。
 玲桜は百花と目が合うと大きく目を見開き、わずかに瞳を揺らした。

「玲桜……なの?」

 食い入るように玲桜を見て、百花は掠れ声で問いかけた。
< 24 / 37 >

この作品をシェア

pagetop