愛してるの期限が切れる前に
「ももたちくらいなら、片足でも余裕だから。早く掴まって。いつまた車が通るかわからないだろう。自転車もどかさないと」
 淡々と正論づくめにされれば、もう頷くしかなかった。
 今は感情よりも、状況の安全を優先すべきだ。
 そう思い、玲桜の手を取った。
 片足でも余裕だと言うだけあり、彼はよろけることなく百花たちを引き起こしてくれた。羨ましいくらいの強い体感には惚れ惚れした。
「ありがとう……、その助けてくれて」
「どういたしまして。事故にならなくてよかった」
 口調は百花が知る玲桜だが、声音はまだ硬い。
(怒ってる――んだろうな)
 けれど、なにに?
 嫌いな人のせいで怪我をしたこと?
 それとも、左右を確認せず道を渡ろうとしたせいで、玲桜に迷惑をかけたことだろうか?
(でも、これに関しては全面的に私が悪い)
 百花が周りに注意を払っていれば起こらなかった出来事だ。
(なにやってるのよ)
 もし花に万が一のことがあったら、百花は絶対に自分を許せない。
 猫が部屋に侵入してきたとき、しっかりしないとと思ったばかりではないか。
 百花が一人反省している間に、玲桜は脚を引きずりながら転倒した自転車を歩道まで持ってきてくれていた。
「あ……ごめん」
 上乗せされていく不甲斐なさに、「そういうところよ」と百花は自分を責めた。
 自分のしでかした後始末すらできないなんて、最低すぎる。
 情けなくて、それでも花を抱きしめて立ち尽くしていると、「こっち」と玲桜に腕を引かれた。歩道の脇に寄せられ、いよいよ消えてしまいたいくらいの惨めさに襲われる。
「大丈夫か?」
< 27 / 37 >

この作品をシェア

pagetop