愛してるの期限が切れる前に
 泣くなんてみっともないだけだとわかっていても、涙が視界を滲ませた。
「ままぁ?」
 腕の中から花が呼びかけてきた。
 唇を噛みしめ、「……ん?」と花の声に応える。少し声が掠れてしまうと、花が「いちゃい?」と百花の顔に手を伸ばしてきた。
「だい……丈夫、だよ」
 本当に、今日は散々だ。
 一人なら、「もういいや」と自暴自棄になって、全部を投げ出すこともできただろうが、今は花がいる。なにより、自分の不始末は自分で始末をつけなければ。
「本当にごめんなさい。……病院、行けそう? できれば付き添わせてほしい……です」
 玲桜が怪我をしたのは百花のせいだから、治療費は当然百花が払うべきだ。
(いくらになるんだろう。怖いな)
 玲桜は歩道脇に落ちていた黒いキャップを拾って、目深に被り直した。目元が隠れても、玲桜は変わらず格好よかった。
「もも、なんで泣いてるの? まさか、どこか打ったのか!?」
 嫌だな。玲桜にまで気づかれてしまった。
 そうじゃない、と首を横に振る百花の前で、玲桜はハーフパンツやパーカーの両手で弄り、小ぶりの携帯を取り出した。が、画面を見て露骨に眉を顰めた。
「私が一緒だと迷惑かけるようなら後日でもいいから、治療費を」
「それより、携帯貸してくれる? 俺の、今のでバキバキに画面割れた」
 ため息と共に見せられた画面は、思わず目を懲らしてしまうくらい悲惨な割れ方をしていた。
「うわ……、重ね重ねごめんなさい。携帯代も請求して。即金……とは言えないけれど、必ず弁償する。はーちゃん、ちょっとだけ下りてくれる?」
「やぁ……っ」
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