愛してるの期限が切れる前に
 肩にかけてある携帯を取りたいだけなのに、花がしがみついたまま離れなくなってしまった。
「……はーちゃんって言うの?」
 すると、ぐずる花に玲桜が声をかけた。
「俺と一緒のお目々だね」
 花の目の高さまでかがんだ玲桜が、キャップをずらして自分の目を見せた。
 玲桜に名前を呼ばれて、不機嫌そうに少しだけ顔を上げた花だったが、玲桜のモルフォ蝶色の瞳を見て、みるみる目を丸くさせていった。
「おめめ、いっちょ」
「そうだよ、おいで」
 そう言って、玲桜が花に両手を差し出した。花も玲桜に手を伸ばす。
「駄目、やめて」
 人見知りしない子だが、こんなにもすぐ誰かに抱かれようとすることはなかった。本能で感じるものがあったのだろうか。
 思わず引き留めるも、花自身が百花の腕の中で身じろぎをした。自らの意志で玲桜のところに行こうとしている。
「はーちゃん、一人で立てるよね?」
 そう促すも、「やぁぁっ」と駄々をこねられてしまった。
 一瞬でも玲桜に花を渡したくない。
 花を抱きしめる腕に力をこめると、「嫌なの?」と玲桜が直球で問いかけてきた。
 玲桜は携帯が取れないでいる百花を手伝ってくれているだけ。わかっていても過剰に反応してしまう。
 そうこうしているうちに、花が玲桜の腕の中に収まってしまった。
「あ……っ」
「ももは今から言うところに連絡して。番号は……」
「ま、待って! あなたが直接したらいいじゃない。どうして私なの?」
「だって、俺の子だろ」
「――っ」
 不意打ちの質問に、百花は息を呑んだ。
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