愛してるの期限が切れる前に
 「だって」の使い方が完全に間違っているのに、突きつけられた事実にごまかしも否定もできない。
(あぁ、でもこの感じ。玲桜だ)
 脈絡のない会話に聞こえるが、玲桜の中ではちゃんと筋道が通っている。ただ人と理解力のスピードが違うせいで、しなくてはいけないいくつかの会話をはしょってしまうのだ。
「もも、急いで。人が来る」
「そんなっ! 駄目よ、返して!! その子は私の子よ!」
「なら、決断したらいい。簡単だろ。その携帯で俺が今から言う番号に連絡して、こう言って。”玲桜と結婚する”って」
 花を抱きしめた玲桜は、そう言ってまっすぐ百花を見た。
「は? ちょ……、ちょっと待って。結婚って――」
 玲桜の思考の速さについていけない。
 言っていることがハチャメチャだ。
 どうなったら、そんな結論に至るのだろう。
「もしかして、頭も打ってる? それならなおのこと、花は返して――」
 ついていけないと首を振りながら花に手を伸ばすが、玲桜がわずかに百花に背を向ける態勢で拒んできた。
「頭は打っていないし、俺は本気だ。結婚しよう」
「無理に決まってるじゃない」
「俺に無理なんて言葉は存在しない。すべて実現してきた。もも、俺の本気、見てて。でもその前に病院かな。ほら、電話してよ」
「だからっ」
 かみ合わない会話にイライラしてくる。
 そんな小説の中でしか聞かない台詞を、現実で使う人がいるなんて思わなかった。
 けれど、鳳家の後継者ならたいがいのことなら実現可能なのだろう。
 加えて、玲桜は天才だ。
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