愛してるの期限が切れる前に
「そういうことだから、あとの手筈は任せた。くれぐれも百花に迷惑はかけるな。それと車を回してくれ。位置情報はわかるだろ。チャイルドシートも忘れるな。百花が使ってる電動自転車も忘れずに引き取りに来て。五分だ」
『は? え!? 百花って、ちょ……玲桜?』
 慌てふためく声を無視して、玲桜が通話を切った。
 なんて横暴でふてぶてしい態度だろう。
「今の人は誰なの?」
「俺の秘書。すぐに迎えが来るよ。それで病院まで行こう。ももとはーちゃんに怪我がないか診てもらわないと」
 一番具合の悪そうな人に心配されても、とは思うが、もはや余計なことを言って玲桜を刺激したくない。
 玲桜は一度、下した決定事項を覆したりしないからだ。
(結婚するって、どういうつもり。本気なの?)
 百花のことなど、なんとも思っていないのに、どんな意図があるというのか。
 百花との結婚しても続くわけがない。
 それくらいのこと百花にだってわかる。
 育った環境が違えば、価値観も違う。
 玲桜には当たり前のことでも、百花には受け入れられない生活習慣も多々出てくるだろう。そんな生活がうまくいくとは思えない。
 なにより、百花が玲桜との生活を思い描けないでいた。
(どうして玲桜はそんな無茶なことを言わせたの?)
 不幸中の幸いだったのが、百花たちが事故に遭いかけたとき、周りに人はいなかったことだ。帽子を被っていると、一見しただけではレオだとは気づかれない。それでも、抜群のスタイルのよさは人目を引いているが。
 先ほどから、通行人がちらちらと百花たちを見ていく。
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