愛してるの期限が切れる前に
 そうこうしているうちに、百花たちの横に黒塗りの乗用車が滑り込んできた。
 運転席から下りて来たのは、スーツ姿の三十代くらいの男だ。
 彼は玲桜に一礼すると、恭しく後部座席のドアを開けた。運転席の後ろには玲桜の指示通り、チャイルドシートが乗っていた。
 しかも、席が向かい合っている。
(こんな高級車、乗ったことないんだけれどな)
 正確な時間までは計っていなかったが、体感は五分くらいだったように思う。そんな短期間で玲桜の要求をこなせるのだから、鳳家のすごさを感じずにはいられなかった。
「乗って」
 ここまで来て、乗らないという選択肢はもうない。
 鳳家にかかりたくはないが、玲桜の足の怪我は百花の責任だ。
「お……願いします」
 運転手の男に頭を下げながら乗り込むと、続いて玲桜も運転手と軽く話したのち、花と共に乗り込んできた。
「あ、花は私が」
「大丈夫、させて」
 チャイルドシートなどどこでつける機会があったのかと思うほど、玲桜は手慣れていた。
 準備が整うと同時に、車は走り出した。
 本当に動いているのかと思うほどの静かさは、不安になるくらい快適だった。
「玲桜、病院の場所言わないと」
「もう言った」
「そ、そうなの?」
 乗り込む前に話していたあのときだろう。
 手際のよさに舌を巻きつつ、玲桜に振り回されている感が否めない。
 花は久しぶりの車に目をキラキラさせていた。
 いったい、どうなってしまうのだろう。
 不安を乗せて、車は病院へと走り出した。

 診察の結果は、捻挫と打撲。
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