愛してるの期限が切れる前に
 びっくりして玲桜を見ると、彼はぎゅっと眉間に皺を寄せていた。
「辛い思いをさせた」
 それはなにに対して?
「この子に関して、辛いことなんてなかったよ」
 強がりでも、百花は花と出会えて幸せになれた。愛情という言葉は知っていても、実感できるようになったのは、親の立場になってからだ。
 両親からの愛情や花が剥けてくれる無条件な愛に、自分は同じだけの想いを返せているだろうか。
 花を産んで愛がどんなものかを感じられるようになったことを、百花は幸せだと思っていた。
「玲桜は、いつからこの町に? 鳳グループの広告塔をしてるんだよね?」
「越してきたのは今年になってからだよ。と、言っても月の三分の一もいられないくて、ついこの間までホテル暮らしだった」
 ジョギングする男の人とすれ違うようになったのも、それくらいからだった気がする。
 寒い中、根性があるなと思ったから印象に残っていた。
(でもどうして?)
 四年間、玲桜がどういう時間を過ごしてきたかはわからないが、世間に顔と名前が売れるくらいには忙しかったに違いない。
 そんな人が、なぜ地方にわざわざホテル暮らしをしてまで生活拠点を移すのだろう。絶対に、都会にいた方が利便性がいいに決まっているのに。
 偶然選んだ移住先に、百花たちもいたということなのだろうか。
「ももたちが暮らす町に俺も住みたかった」
「え?」
 はっきりと百花たちが移住の理由だと言われ、面食らった。偶然ではなく、故意だったのか。
「それじゃ、私たちと朝すれ違ってたのもわざと?」
 まさかと思って問いかけると、玲桜がためらいなく頷いた。
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