シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「……梨来さん」
「んー?」
希美が鼻を動かした。
「何か焦げ臭くないですか?」
「うん」
梨来はすでに気づいていた。
臭い。
わずかな煙。
廊下の向こうで足を止め始める学生たち。
「希美ちゃん、ここにいて」
「え?」
「動かないでね」
声はいつもと同じ柔らかさだったが、梨来はもう歩き出していた。
角を曲がると、黒いキャップを被った男子学生がこちらへ走ってくる。
「職員! 誰か職員の人いませんか!」
「どうしたの?」
「あっ、えっと、火っす! 部屋から煙出てて!」
「場所は?」
「あっちっす!」
「中に人は?」
「分かんないっす! 今、男の人が見てて!」
「男の人?」
「名前知らないんすけど、でかくて眼鏡の――」
梨来の足が動いた。
「黒髪?」
「え? そうっす! 黒髪!」
直充の顔が浮かんだ。
背が高く、眼鏡で、黒髪。それだけなら他にもいるはずなのに。
「職員には私から連絡するね。あなたは周りの学生を近づけないようにして」
「は、はい!」
梨来は走った。
「んー?」
希美が鼻を動かした。
「何か焦げ臭くないですか?」
「うん」
梨来はすでに気づいていた。
臭い。
わずかな煙。
廊下の向こうで足を止め始める学生たち。
「希美ちゃん、ここにいて」
「え?」
「動かないでね」
声はいつもと同じ柔らかさだったが、梨来はもう歩き出していた。
角を曲がると、黒いキャップを被った男子学生がこちらへ走ってくる。
「職員! 誰か職員の人いませんか!」
「どうしたの?」
「あっ、えっと、火っす! 部屋から煙出てて!」
「場所は?」
「あっちっす!」
「中に人は?」
「分かんないっす! 今、男の人が見てて!」
「男の人?」
「名前知らないんすけど、でかくて眼鏡の――」
梨来の足が動いた。
「黒髪?」
「え? そうっす! 黒髪!」
直充の顔が浮かんだ。
背が高く、眼鏡で、黒髪。それだけなら他にもいるはずなのに。
「職員には私から連絡するね。あなたは周りの学生を近づけないようにして」
「は、はい!」
梨来は走った。