シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「うっわ……マジで消えてる」

 声がして、梨来と直充が同時にそちらを見る。

 さっきの黒いキャップの男子学生だった。

「職員は?」

「もう来るらしいっす! 俺は人が近づかないようにしてて――って、え?」

 男子学生は床を見て、消火器を見て、最後に直充を見る。

「これ、一人でやったんすか?」

「ああ」

「いや、いた! 俺いた!」

「職員呼びに行ってただろ」

「そうだけど!」

 もう一度、床を見る。

「いや、マジですご……」

「消火器使っただけだろ」

「だけじゃないっすよ! 俺だったら『火ぃ出てる! どうしよ!』で終わってますよ!?」

「職員呼びに行けただろ」

「言われたからっす!」

「十分だろ」

「…………」

 男子学生が黙る。

「何」

「いや……え、なんなんすか、この人」

「何」

「めちゃくちゃ格好いいんすけど」

「何が」

「そこっすよ!」

「どこ」

「分かんないっすけど!」

 直充が明らかに困った顔をする。

 梨来は思わず笑った。

 この男子学生が何を言いたいのか。

 今なら少し、分かる気がした。
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