シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「梨来さん」

「んー?」

「これ、どこに置きます?」

「そっちの机で大丈夫だよ」

「はーい」

 希美がファイルを机へ置く。

「ありがとうねぇ」

「これくらい全然!」

「助かったよ」

 梨来は受け取った書類を棚へしまった。

 希美は学生課へ用事があるついでに、少しだけ作業を手伝ってくれていた。

「じゃあ私、そろそろ行きますね」

「次、講義?」

「はい!」

「今日は間に合いそう?」

「余裕です! 昨日みたいに起きたら一限終わってた、なんてことはないので!」

「今日はちゃんと起きてるもんねぇ」

「そこからですか!?」

 希美が笑う。

「じゃあ、行ってきます!」

「うん。いってらっしゃい」

 手を振って希美が出ていく。

 梨来は小さく笑いながら机の上へ視線を戻し、残っているファイルをまとめた。

 そのとき。

『分かってます』

「…………」

 昨日の直充の顔が浮かび、手が止まる。

 いつも真面目な顔をしているのに、あのときはほんの少し笑った。

「……なんでだろ」

 答えは出ない。

 そのまま仕事へ戻った。
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