シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―

7.迷子の猫

「梨来さん!」

 午後。

 廊下を歩いていた梨来は、後ろから呼ばれて振り返った。

「んー?」

 希美が小走りでやってくる。

「ちょっと来てください!」

「どうしたの?」

「猫です!」

「猫?」

「いなくなりました!」

「……猫が?」

「はい!」

 梨来は首を傾げた。

「大学の猫?」

「違います。迷子の猫です!」

「迷子の猫が、迷子になったの?」

「そう言われるとややこしい!」

 希美に連れられて向かった先には、一人の女子学生がいた。

 しゃがみ込み、スマートフォンの画面を見つめている。

「この子です」

 画面には一匹の猫。

 白と茶色の毛に、青い首輪。

「この近くで見かけたって聞いて、探しに来たみたいなんです」

「飼い主さん?」

「妹さんの猫らしくて」

 梨来もしゃがむ。

「名前は?」

「チョコです」

 女子学生が答えた。

「昨日の夜、家から出ちゃって……ずっと探してるんですけど」

「そっかぁ」

 梨来は写真を見る。

 まだ若そうな猫だった。

「この大学で見た人がいるの?」

「はい。午前中に正門の近くで似た猫を見たって」

「じゃあ、まだ近くにいるかもしれないね」

「……はい」

 女子学生の顔には疲れが見える。

 昨夜から探しているのなら、ほとんど眠っていないのかもしれない。

 梨来は立ち上がった。

「一緒に探そっか」

「え?」

「私も探すよ」

「でも、お仕事……」

「少しくらいなら大丈夫」

「梨来さん、そう言うと思った」

 希美が笑う。

「希美ちゃんも?」

「もちろん探します!」

「次の講義は?」

「…………」

「あるんだねぇ」

「まだ時間あります!」

「遅れないでね?」

「分かってます!」

 梨来はふふっと笑った。
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