シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「チョコー」

「チョコー!」

「チョコちゃーん!」

 西側の駐輪場。

 梨来たちは手分けして周辺を探していた。

「猫って呼んだら出てくるんすか?」

 大我が植え込みを覗く。

「飼い主の声なら」

「俺じゃ駄目じゃないっすか」

「たぶんな」

「じゃあ俺、何すればいいんすか!?」

「静かに探せ」

「それ一番苦手!」

「知ってる」

「知ってるんすか!?」

 梨来が思わず笑う。

「ふふっ」

 大我が振り返った。

「梨来さんまで!」

「ごめんねぇ」

「俺、真剣っすよ!」

「声」

 直充が言う。

「え?」

「大きい」

「…………」

 大我が両手で口を塞いだ。

 静かになった。

 直充は駐輪場の奥へ進む。

 自転車の下。

 植え込み。

 室外機の裏。

 足を止めては確認し、また進む。

 梨来も探していたが、いつの間にか直充の動きを目で追っていた。

「直充くん」

「はい?」

「何見てるの?」

「隠れられそうなところです」

「そっかぁ」

 直充がしゃがみ、植え込みの奥を覗く。

 また立ち上がって、次へ向かう。

「直充くんって、こういうの得意だね」

「何がですか」

「見つけるの」

「まだ見つけてませんけど」

「そうだけど」

「普通に探してるだけです」

「…………」

 普通。

 また、その言葉。

「直充くんの普通って、ちょっと変わってるね」

「そうですか?」

「うん」

「人のこと言えないでしょう」

「え?」

「昨日も騒ぎがあったらすぐ来たし、今日も仕事中なのに猫探してるし」

「…………」

 直充はそれだけ言って、また植え込みへ視線を戻した。

 普通じゃない。

 梨来はその言葉を胸の中で繰り返す。

 普通の学校生活も、友達との放課後も知らない。

 恋だって知ってはいるけれど、自分がその中にいたことはない。

 ずっと憧れてきた“普通”。

 なのに直充に言われると、不思議と嫌ではない。

「……そっかぁ」

「何ですか」

 梨来は笑った。

「じゃあ、お互い様だね」

「何がです?」

「普通じゃないところ」

「…………」

「ふふ」

 直充は少しだけ不思議そうな顔をした。
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