シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「待って」
しばらくして、直充が足を止めた。
「どうしたの?」
「静かに」
梨来も止まる。
学生の声。
遠くを走る車。
風で葉が擦れる音。
その中に、かすかな鳴き声が混じった。
「……にゃ」
「!」
梨来が目を見開く。
「今」
「聞こえました」
「どこ?」
もう一度。
「にゃあ……」
直充が駐輪場の奥へ向かう。
「こっち」
梨来も続く。
古い倉庫との隙間を覗くと。
「いた……!」
白と茶色。
青い首輪。
猫が狭い隙間の奥で身体を丸めていた。
「チョコ?」
梨来がしゃがむ。
猫の身体が小さく縮こまった。
「怖がってるね」
「近づかない方がいいです」
直充も少し離れたところでしゃがむ。
「逃げるかもしれないので」
「どうする?」
「飼い主呼びましょう」
女子学生を呼ぶと、すぐに駆けてきた。
「チョコ!」
「待って」
直充が止める。
「急に行くと逃げるかもしれないです」
「あ……」
「そこから呼んでください」
女子学生がしゃがむ。
「チョコ、おいで」
猫の耳が動く。
「大丈夫だよ。チョコ」
少しずつ顔を上げるが、出てこない。
「好きな食べ物あります?」
「持ってます」
女子学生が鞄から猫用のおやつを取り出し、封を開ける。
匂いが届いたのか、猫の鼻が動いた。
一歩。
また一歩。
ゆっくり近づいてくる。
「チョコ……」
あと少し。
そのとき、遠くで大きな音がした。
猫がびくっと身体を震わせ、奥へ戻ろうとする。
「あっ」
直充がゆっくり手を伸ばした。
「大丈夫」
「…………」
低く、落ち着いた声。
「怖くない」
猫が止まった。
直充はそれ以上近づかず、ただ手を差し出している。
猫がその手の匂いを嗅ぐ。
「ほら」
直充が女子学生の方を見る。
「いるから」
猫の耳が動き、やがて直充の前を通って女子学生の方へ歩いていく。
「チョコ!」
女子学生が猫を抱き上げた。
「よかった……!」
ぎゅっと胸に抱きしめると、猫も小さく鳴いた。
「よかったぁ」
梨来も笑う。
しばらくして、直充が足を止めた。
「どうしたの?」
「静かに」
梨来も止まる。
学生の声。
遠くを走る車。
風で葉が擦れる音。
その中に、かすかな鳴き声が混じった。
「……にゃ」
「!」
梨来が目を見開く。
「今」
「聞こえました」
「どこ?」
もう一度。
「にゃあ……」
直充が駐輪場の奥へ向かう。
「こっち」
梨来も続く。
古い倉庫との隙間を覗くと。
「いた……!」
白と茶色。
青い首輪。
猫が狭い隙間の奥で身体を丸めていた。
「チョコ?」
梨来がしゃがむ。
猫の身体が小さく縮こまった。
「怖がってるね」
「近づかない方がいいです」
直充も少し離れたところでしゃがむ。
「逃げるかもしれないので」
「どうする?」
「飼い主呼びましょう」
女子学生を呼ぶと、すぐに駆けてきた。
「チョコ!」
「待って」
直充が止める。
「急に行くと逃げるかもしれないです」
「あ……」
「そこから呼んでください」
女子学生がしゃがむ。
「チョコ、おいで」
猫の耳が動く。
「大丈夫だよ。チョコ」
少しずつ顔を上げるが、出てこない。
「好きな食べ物あります?」
「持ってます」
女子学生が鞄から猫用のおやつを取り出し、封を開ける。
匂いが届いたのか、猫の鼻が動いた。
一歩。
また一歩。
ゆっくり近づいてくる。
「チョコ……」
あと少し。
そのとき、遠くで大きな音がした。
猫がびくっと身体を震わせ、奥へ戻ろうとする。
「あっ」
直充がゆっくり手を伸ばした。
「大丈夫」
「…………」
低く、落ち着いた声。
「怖くない」
猫が止まった。
直充はそれ以上近づかず、ただ手を差し出している。
猫がその手の匂いを嗅ぐ。
「ほら」
直充が女子学生の方を見る。
「いるから」
猫の耳が動き、やがて直充の前を通って女子学生の方へ歩いていく。
「チョコ!」
女子学生が猫を抱き上げた。
「よかった……!」
ぎゅっと胸に抱きしめると、猫も小さく鳴いた。
「よかったぁ」
梨来も笑う。