シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
 希美と大我が駆けてきた。

「見つかったんですか!?」

「いたっすか!?」

「うん」

「よかったー!」

「マジでいた!」

 女子学生は何度も頭を下げた。

「本当にありがとうございます……!」

「よかったねぇ」

 梨来が猫の頭をそっと撫でる。

「もう逃げちゃ駄目だよ?」

「にゃ」

「返事した!」

 希美が笑う。

「かわいい!」

「俺も触っていいっすか!?」

 大我が近づく。

 猫が女子学生の腕の中へ顔を埋めた。

「避けられた!」

「声大きいからだろ」

「直充さん!」

 笑い声が広がる。

 その中で、梨来はふと直充を見た。

 少し離れたところに立ち、猫を見ている。

「直充くん」

「はい?」

「猫、好き?」

「嫌いではないです」

「そっかぁ」

 梨来は笑いながら隣へ行く。

「さっき」

「はい」

「猫に、大丈夫って言ってたね」

「怖がってたので」

「優しい声だった」

「…………」

 直充が梨来を見る。

「そうですか?」

「うん」

「普通に喋っただけですけど」

「ふふ」

「何ですか」

「やっぱり直充くんだなぁって」

「意味分かりません」

「そういうところ」

「どこですか」

「自分では普通だと思ってるところ」

 きっと直充にとっては、これも普通のこと。

 梨来は隣にいる直充を見上げた。

「何ですか」

 梨来は少し考える。

「直充くんのこと、見てた」

「…………」

 今度は直充が黙った。

「猫探してるときね」

「ああ」

「いろんなところ見てるなぁって」

「探してたので」

「うん」

 やっぱり、いつも通り。

 それが少し可笑しくて、梨来は笑った。

「直充くん」

「はい」

「今日はありがとう」

「別に」

「ふふ」

「だから何ですか」

「今度は聞いてないよ」

「笑ってるでしょう」

「嬉しいから」

「猫見つかったから?」

「うん」

 梨来は頷く。

 それから。

「それもあるよ」

「…………」

 直充がこちらを見る。

「他にも?」

「…………」

 梨来は少し考えた。

 けれど、自分でもまだ答えを知らない。

「まだ分からない」

「…………」

「でも、嬉しいのは本当だよ」

「何ですか、それ」

 呆れたように直充が息を吐く。

 その横顔を見ながら、梨来は思った。

 昨日は、また会えたら嬉しいと思った。

 今日は会えて。

 もう少しだけ。

 この人のことを知りたいと思った。

 まだ、理由は分からない。

 けれど。

 分からないことが少しずつ増えていくのは、なんだか楽しかった。
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