シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
9.はじめての学食
昼休み。
事務室へ戻る途中、梨来は足を止めた。
「…………」
少し先を、学生たちが次々と同じ方向へ歩いていく。
友達と笑いながら。
今日の講義の話をしながら。
何を食べるか相談しながら。
向かう先は、分かっていた。
学生食堂。
「…………」
梨来はしばらく、その流れを眺めた。
大学へ来てから何度も見ている光景だった。
昼になれば、学生たちが学食へ向かう。
食事をして。
友達と話して。
午後の講義へ行く。
ただ、それだけ。
でも梨来は、その〝ただそれだけ〟を経験したことがない。
「…………」
一度くらい。
食べてみたいなぁ。
職員が学食を利用しても問題はない。
一人で入れないわけでもない。
それでも、なぜか今まで入ったことはなかった。
梨来が見ていたのは、料理ではなく。
楽しそうに歩いていく学生たちの方だったから。
「……戻ろ」
そう呟いて歩き出そうとしたとき。
「梨来さん!」
「んー?」
振り返る。
希美がこちらへ駆けてきた。
「お昼、もう食べました?」
「まだだよ」
「じゃあ、一緒に食べません?」
「え?」
「私も今からなんです」
「…………」
梨来が瞬きをする。
「どこで?」
「学食ですけど」
「…………」
「一緒に行きたい」
「行きましょう!」
「うん」
希美の隣に並ぶ。
学生たちと同じ方向へ歩き出す。
それだけで。
梨来の足取りは、いつもより少し軽くなった。
事務室へ戻る途中、梨来は足を止めた。
「…………」
少し先を、学生たちが次々と同じ方向へ歩いていく。
友達と笑いながら。
今日の講義の話をしながら。
何を食べるか相談しながら。
向かう先は、分かっていた。
学生食堂。
「…………」
梨来はしばらく、その流れを眺めた。
大学へ来てから何度も見ている光景だった。
昼になれば、学生たちが学食へ向かう。
食事をして。
友達と話して。
午後の講義へ行く。
ただ、それだけ。
でも梨来は、その〝ただそれだけ〟を経験したことがない。
「…………」
一度くらい。
食べてみたいなぁ。
職員が学食を利用しても問題はない。
一人で入れないわけでもない。
それでも、なぜか今まで入ったことはなかった。
梨来が見ていたのは、料理ではなく。
楽しそうに歩いていく学生たちの方だったから。
「……戻ろ」
そう呟いて歩き出そうとしたとき。
「梨来さん!」
「んー?」
振り返る。
希美がこちらへ駆けてきた。
「お昼、もう食べました?」
「まだだよ」
「じゃあ、一緒に食べません?」
「え?」
「私も今からなんです」
「…………」
梨来が瞬きをする。
「どこで?」
「学食ですけど」
「…………」
「一緒に行きたい」
「行きましょう!」
「うん」
希美の隣に並ぶ。
学生たちと同じ方向へ歩き出す。
それだけで。
梨来の足取りは、いつもより少し軽くなった。