シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「梨来さん?」

「んー?」

「食べないんですか」

「あ、食べる」

 梨来は箸を持った。

「いただきます」

「いただきます!」

 希美と大我も食べ始める。

 梨来は主菜を一口食べた。

「…………」

「どうですか?」

 希美が聞く。

「美味しい」

「よかった!」

 梨来は隣を見る。

「直充くん」

「はい」

「美味しいよ」

「そうですね」

「同じだねぇ」

「何がですか」

「食べてるもの」

「…………」

 直充が自分の定食を見る。

 それから梨来の定食を見る。

「同じの頼んだんだから、同じでしょう」

「そうなんだけど」

「?」

「ふふ」

「何で笑うんですか」

「同じだなぁと思って」

「だから同じでしょう」

「うん。そうなんだけどねぇ」

 梨来はもう一口食べる。

 同じものを食べている。

 ただ、それだけなのに。

 さっきより少し美味しく感じた。

 目の前では希美が今日の講義の話をしている。

 大我が大きな声で反応して。

 隣では直充が静かに食べている。

 誰かと同じテーブルを囲んで。

 どうでもいい話をして。

 一緒に笑って。

 昼ご飯を食べる。

「…………」

 これ。

 やってみたかったんだ。

 ずっと外から見ていた光景の中に。

 今日は自分もいる。

 胸の奥が、じんわりと温かくなった。

「梨来さん」

「んー?」

「味噌汁、冷めますよ」

「あ」

「さっきから全然減ってないです」

「見てたの?」

「目に入っただけです」

「そっかぁ」

 梨来は味噌汁へ手を伸ばす。

 その横で、大我が顔を上げた。

「直充さん」

「何」

「俺のカレーも減ってないっすよ」

「食えよ」

「俺のことは心配してくれないんすか!?」

「何で」

「梨来さんには言ったのに!」

「味噌汁冷めるからだろ」

「俺のカレーも冷める!」

「じゃあ食え」

「扱い違いすぎません!?」

「ふふっ」

 梨来が笑う。

 直充が少しだけ眉を寄せた。

「何ですか」

「楽しいから」

「…………」

 直充が一瞬だけ黙った。

「そうですか」

「うん」

 梨来は味噌汁を飲む。

 温かかった。
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