シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「梨来さん、次これ食べましょうよ」

「次?」

「次来たときです」

 希美がスマートフォンでメニューを見せる。

「このパスタも美味しいですよ」

「へぇ」

「俺、唐揚げおすすめっす!」

「大我くん、今日カレーだよね?」

「唐揚げも食べたことあるっす!」

「そういうこと」

「直充さんは?」

 大我が聞く。

「何が」

「おすすめ!」

「知らない」

「え?」

「普段弁当だから」

「あ、そっか!」

「もう忘れたのか」

「いやー、学食にいるからつい!」

 梨来が笑う。

「ふふ」

「梨来さんは次、何食べたいですか」

 直充が聞いた。

「私?」

「はい」

「…………」

 梨来は少し考える。

「まだ分かんない」

「そうですか」

「うん。でも」

 学食の中を見回す。

 賑やかな学生たち。

 笑い声。

 食器の音。

 同じテーブルにいる三人。

「また来たいなぁ」

「来ればいいじゃないですか」

 直充が言った。

「…………」

「職員も使えるんでしょう?」

「うん」

「じゃあ、いつでも来られますよね」

「そうなんだけどねぇ」

「?」

 直充は分からないらしい。

 梨来は少し笑った。

 学食に来たかったわけじゃない。

 ここで何かを食べてみたかっただけでもない。

 誰かに。

『一緒に食べません?』

 そう言ってもらって。

 一緒に歩いて。

 一緒に何を食べるか迷って。

 同じテーブルでご飯を食べる。

 そんな普通の昼休みを、経験してみたかった。

「今日は楽しいから」

 梨来が言う。

「一人で来るより、みんなと食べる方が楽しい」

「あー、分かります!」

 希美が笑う。

「一人も楽ですけど、みんなで食べるのもいいですよね」

「うん」

「じゃあまた来ましょう!」

「いいの?」

「もちろん!」

「俺も!」

 大我が手を上げる。

「誰もお前には聞いてない」

「直充さん!?」

「ふふっ」

 梨来が笑う。

 それから直充を見る。

「直充くんは?」

「俺?」

「うん」

「…………」

 直充が箸を置く。

「弁当あるので」

「そっかぁ」

 ほんの少し。

 残念だと思った。

 けれど。

「時間合えば来ますよ」

「…………」

 梨来が顔を上げる。

「それは、嬉しいな」

「たまになら」

「そっかぁ」

 さっき落ちた気持ちが、すぐに戻る。

「じゃあ、また一緒に食べようね」

「はい」

 また。

 その言葉だけで、次の楽しみがひとつ増えた。
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