シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「希美さん?」

「ん?」

 少し先まで歩いたところで、希美が足を止めていた。

 振り返った先には、並んで歩く梨来と直充。

「何見てるんすか?」

「あの二人」

 大我も振り返る。

「梨来さんと直充さん?」

「うん」

 希美の口元が、にやりと上がる。

「デートじゃん」

「え?」

「これ、デートじゃん」

「学食っすよ?」

「場所じゃないの」

「そうなんすか?」

「そうなの」

「でも俺らもいましたよ?」

「次は二人かもしれないでしょ」

「なるほど?」

 大我は分かっているのかいないのか、曖昧に頷く。

 梨来が何かを言って笑っている。

 直充はいつもと変わらない。

 でも。

 歩く速さは、梨来と同じだった。

「…………」

 希美の笑みが深くなる。

「ふふ」

「希美さん、悪い顔してるっすよ」

「してないよ?」

「してますって」

「気のせい」

「絶対なんか企んでる!」

「企んでないって」

 希美はもう一度だけ、二人を見る。

 昨日。

 梨来は直充に名前を呼ばれただけで、嬉しかったと笑っていた。

 今日は、一緒にご飯を食べて。

 また行こうと約束して。

 あんなに嬉しそうに笑っている。

「…………」

 これは。

 ちょっと面白くなってきた。

「希美さん?」

「ん?」

「めっちゃニヤニヤしてますよ」

「してないよ?」

「してるって!」

「ほら、大我くん。講義遅れるよ」

「あ! やば!」

「走らないでね」

「どっかで聞いたような台詞!」

 大我が慌てて走り出す。

 希美もそのあとを追いながら、もう一度だけ振り返った。

 まだ二人は並んで歩いている。

「ふふ」

 デート。

 梨来がその言葉を意識するのは。

 もう少し先になりそうだった。
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