シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「梨来さん」

「んー?」

「こっちですよ」

「え?」

 直充の声に、梨来が足を止める。

 見ると、事務室へ戻る道を通り過ぎていた。

「あ」

「仕事でしょう」

「そうだった」

「何考えてたんですか」

「今日のこと」

「学食ですか」

「それもあるよ」

 梨来は来た道を戻る。

 数歩進んでから、振り返った。

「直充くん」

「はい?」

「またね」

「はい」

 直充が少しだけ手を上げる。

 梨来も手を振った。

 離れていく背中を見ながら、さっきの言葉をもう一度思い出す。

『また行きましょう』

「…………」

 ただ、一緒にご飯を食べるだけ。

 きっと直充にとっては、それくらいのこと。

 でも梨来には。

 次に直充と会える楽しみが、ひとつ増えた。

 また、一緒に。

 その〝また〟が。

 今まで知らなかったくらい、楽しみだった。
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