シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
 正門を出ると、駅へ向かう学生たちの流れが続いていた。

「今日は何してたの?」

「講義とサークルです」

「そっか。お疲れさま」

「梨来さんは?」

「ずっと仕事。今日は学生さんも多かったかなぁ」

「忙しかったんですか」

「少しね」

 そんな話をしながら歩く。

 会話が途切れても、不思議と気まずくはない。

 梨来は隣を歩く直充をちらりと見た。

 誰かと帰るなら、もっとずっと話しているものだと思っていた。

 でも、こうして黙って歩く時間も悪くない。

「直充くんは、学校楽しい?」

「急ですね」

「ちょっと聞いてみたくなったの」

「普通です」

「友達と帰ったりもする?」

「しますよ」

「寄り道は?」

「たまには」

「いいねぇ」

「そんなにですか」

「うん。そういうの、やってみたかったから」

 直充が梨来を見る。

「梨来さん、そういうの好きですよね」

「そういうの?」

「普通のこと」

「…………」

「学食もそうだったので」

「ああ」

「普通だから嬉しいって言ってたでしょう」

「覚えてたんだねぇ」

「会話くらい覚えてます」

「そっか」

 何気なく話したことだった。

 それを覚えていたことが、少し嬉しい。

「あ」

 少し先にコンビニが見えた。

「直充くん」

「はい」

「コンビニ寄っていい?」

「いいですけど」

「一緒に寄ろっか」

「俺もですか」

「せっかくだから」

「買うものあるんですか」

「まだ決めてないよ」

「じゃあ何しに行くんですか」

「寄り道」

「…………」

「学校帰りに寄り道するの、やってみたかったの」

「コンビニでいいんですか」

「コンビニがいいの」

「そうですか」

「うん」

 梨来は自動ドアへ向かう。

 その隣を、直充もついてきた。
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