シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
 店内へ入る。

 飲み物、お菓子、パン、新商品。

 必要なものを買うためなら、何度も来たことがある場所。

 けれど今日は、いつもよりゆっくり棚を眺めた。

「あ、新しいの出てる」

 手には取らず、そのまま隣の商品を見る。

 少し歩いて、また止まる。

 そんな梨来を見ていた直充が口を開いた。

「梨来さん、コンビニ珍しいんですか?」

「違うよ?」

「すごい見てますけど」

「……楽しいだけ」

「コンビニが?」

「こういうのが」

「こういうの?」

「帰り道に一緒に寄って、何買おうかなぁって見てるの」

 梨来は棚へ視線を戻した。

「やってみたかったから」

「普通のコンビニですよ」

「知ってるよ」

「いつでも来られるでしょう」

「一人で来るのとは違うでしょ?」

「そういうものですか」

「私にとってはね」

「…………」

 直充はそれ以上聞かなかった。

 ただ、今が楽しい。

 それだけで十分だった。

 飲み物の棚の前で足を止める。

「どっちにしようかなぁ」

 二本を見比べていると、隣から声がした。

「そっちでいいんじゃないですか」

「こっち?」

「はい」

「どうして?」

「梨来さん、さっきからそっちの方がよく見てるので」

「…………」

 梨来は飲み物から直充へ視線を移した。

「見てたの?」

「隣にいるんだから、分かるでしょう」

「そうなんだ」

 もう一度、二本を見比べる。

 それから直充が言った方を手に取った。

「じゃあ、これにする」

「結局俺が決めるんですか」

「決めたのは私だよ」

「俺に聞いたでしょう」

「直充くんは、私がよく見てた方を教えてくれただけ」

「そうですか」

「うん。ありがと」

「それでお礼言われるんですか」

「言いたかったから」

「…………」

 梨来は飲み物を籠へ入れた。

 自分でも気づいていなかった小さなことを、直充は見ていた。

 それが嬉しくて、籠の中をもう一度見る。

「お菓子も見ていい?」

「どうぞ」

「直充くんも来る?」

「ここで待つ理由もないでしょう」

「じゃあ行こっか」
< 67 / 97 >

この作品をシェア

pagetop