シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
 お菓子売り場をゆっくり歩き、梨来はチョコレートの前で足を止めた。

「これ、美味しそう」

「そうですね」

「さっきよりちゃんと感想言ってる」

「美味しそうって言えばいいって顔してたので」

「顔に出てた?」

「少し」

「最近よく見抜かれるねぇ」

「分かりやすいんじゃないですか」

「そうかなぁ」

 梨来はチョコレートを手に取った。

「これにしようかな」

「決まったんですか」

「うん」

 箱を眺めてから、直充を見る。

「一緒に食べる?」

「俺もですか」

「一人で食べるより楽しそうだから」

「別にいいですけど」

「じゃあ、一個あげるね」

「まだ買ってもないでしょう」

「これから買うよ?」

「そういう意味じゃなくて」

「……もういいです」

「?」

 梨来が不思議そうに直充を見る。

 その顔が可笑しかったのか。

 直充が、ほんの少し笑った。

「…………」

 梨来の視線が、その顔で止まる。

 直充も気づいた。

「何ですか」

「……笑ったなぁと思って」

「笑いますよ、それくらい」

「そっか」

 梨来はそのまま直充を見ていた。

「何ですか」

「もう一回笑って?」

「何でですか」

「見たいから」

「…………」

 直充の返事が止まる。

「笑ってって言われても」

「笑えない?」

「普通はそうじゃないですか」

「そういうもの?」

「そういうものです」

「残念」

「何で残念なんですか」

「見たかったから」

「…………」

 また、直充が黙った。

 梨来を見る時間が、少し長い。

「直充くん?」

「……チョコ、買わないんですか」

「あ、そうだった」

 梨来は手にしていたチョコレートを籠へ入れる。

「忘れてたんですか」

「直充くん見てたから」

「…………」

 今度は返事がなかった。

 直充が眼鏡の位置を直す。

 梨来はその理由までは分からないまま、レジへ向かった。
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