シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
 最近のことを思い返す。

 学食。

 帰り道。

 コンビニ。

 チョコ。

 そのどれにも。

 直充がいた。

「梨来さん?」

「ん?」

「またぼーっとしてます」

「あ、ごめん」

「何考えてたんですか?」

 梨来は少しだけ間を置いた。

「直充くんのこと」

「…………」

「何、その顔」

「今、普通に言いました?」

「考えてたから、そう言っただけだよ」

「そういうところです!」

「どういうところ?」

「もう!」

 希美が両手で顔を覆う。

「梨来さん、自分で言ってて何とも思わないんですか?」

「直充くんのこと考えてたって?」

「はい!」

「本当のことだし」

「そうじゃなくて……!」

 希美が何かを言いかけ。

 諦めたように息を吐いた。

「じゃあ聞きます」

「うん」

「直充先輩に、また会いたいですか?」

 昨日。

 駅で別れたとき。

『またね』

『はい。また』

 梨来が振り返ると。

 直充も振り返っていた。

 目が合って。

 手を振った。

 直充も、小さく手を上げた。

「うん」

 答えは考えるより早かった。

「会いたい」

 希美が黙る。

 梨来も少し遅れて、自分の答えの速さに気づいた。

「……即答したね、私」

「しました」

「そうね」

 希美が少し笑う。

「会いたい人に会いたいって思うの、普通ですよ」

「……そっか」

 梨来はカップへ指を添えた。

「私も、そういうふうに誰かを思うんだね」

「そういうこと?」

「仕事でも、何か用事があるわけでもなくて。ただ会いたいって」

「それが恋なんじゃないですか?」

「そこはまだ分からない」

「えー」

「分からないものは仕方ないでしょ?」

「まあ、そうですけど」

 希美が少しだけ不満そうな顔をする。

 梨来は笑った。

「でも、そう思える人がいるって、いいね」

 希美の表情が少しだけ柔らかくなった。

「じゃあ、もっと普通のことしましょうよ」

「もっと?」

「学食行って、寄り道して、恋バナして」

「これも恋バナに入るの?」

「入りますよ。完全に」

「まだ好きかどうかも分かってないのに?」

「そこを話してる時点で恋バナです!」

「なるほどね」

「じゃあ私、梨来さんの恋愛相談係やります!」

「そこまでは頼んでないよ」

「やります!」

「もう決まってるんだ」

「はい!」

 梨来は笑った。

 友達と。

 恋愛の話をする。

 これも。

 やってみたかったことの一つだった。
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