シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
 返却を終える。

 梨来がカウンターの職員へ小さく頭を下げた。

 直充も隣に立つ。

「ありがとう」

 歩き出してから、梨来が小声で言った。

「はい」

「やっぱり持ってくれるんだねぇ」

「重そうだったので」

「そんなに重くなかったよ?」

 直充が梨来を見る。

「じゃあ、次は持ちません」

「…………」

 梨来が止まる。

 直充も一歩進んでから止まった。

「それは嫌かな」

「…………」

「持ってほしい」

「どっちですか」

「今決めたの」

「そうですか」

「うん」

 梨来が直充の隣へ戻る。

「持ってもらうと、一緒に歩けるから」

「…………」

「少しでも一緒なら嬉しいし」

 直充が黙った。

「直充くん?」

「……梨来さん」

「んー?」

「最近、そういうこと普通に言いますよね」

「そういうこと?」

「…………」

 近くを学生が通る。

 二人とも自然に声を止めた。

 学生が離れてから。

 直充が少しだけ梨来へ顔を寄せる。

「会えて嬉しいとか」

 小さな声。

「一緒にいられて嬉しいとか」

「ああ」

「…………」

「だって、嬉しいから」

「そうでしょうけど」

 梨来は少しだけ直充を見る。

「直充くんには、言いたいから」

「…………」

 直充が眼鏡の位置を直した。

 梨来はその横顔を見る。

 最近。

 少しだけ分かるようになった。

 直充は困ると。

 たまにこうする。

「…………」

 梨来の口元が緩む。

 直充が気づいた。

『何ですか』

 梨来は首を横に振る。

『内緒』

 直充が眉を寄せる。

 梨来は楽しそうに前を向いた。
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