シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
 直充は続きを読んだ。

 六月二十三日。

 ――もう一度試そうか迷っている。

 ――偶然だったのか確かめたい。

 ――でも、確かめてしまったら戻れないような気もする。

 六月二十四日。

 ――今日は触らなかった。

 六月二十五日。

 ――時計は相変わらず動いていない。

 ――音だけはする。

「…………」

 そして。

 六月二十六日。

 ――もう一度――

「…………」

 そこで。

 文章が途切れていた。

 直充が次のページをめくる。

「…………」

 ない。

 一枚ではない。

 何枚か。

 まとめて抜けている。

 綴じ目の近くに、破れた紙だけが残っていた。

「…………」

 その先。

 日誌はまた続いている。

 七月四日。

 だが。

 時計についての記述がない。

 七月五日。

 大学で起きた別の出来事。

 七月六日。

 天気の話。

「…………」

 六月二十六日から。

 七月三日まで。

 丸ごと。

 消えている。

 直充は破れた部分を見る。

 最後に残っているのは。

 ――もう一度――

 その先で。

 何をしたのか。

 何を見たのか。

 分からない。

 ただ。

 抜けているのが。

 時計について確かめようとした、その直後だった。

「…………」

 直充は破れた部分を指でなぞる。

 どこへ行った。

 ふと。

 あの場所が浮かんだ。

 古い資料室。

 時計が入っていた木箱。

 埃を被った棚。

 積み上がった古い資料。

「…………」

 日誌に書かれた倉庫が。

 あの資料室なのかは分からない。

 欠けたページがそこにあるとも限らない。

 けれど。

 時計を見つけたのは。

 あの場所だった。

 探すなら。

 まず、あそこだ。

「…………」

 直充は日誌を閉じた。

 腕時計を見る。

「……」

 五時二十分。

 目が僅かに見開く。

 思っていたより。

 時間が経っていた。

 梨来。

「…………」

 直充は日誌を見る。

 図書館のものなのか。

 誰かの私物なのか。

 それすら分からない。

 本来なら。

 職員へ渡すべきだ。

「…………」

 けれど。

 渡せば。

 もう自分の手元には戻らないかもしれない。

 時計と同じ記録。

 抜け落ちたページ。

 まだ分からないことがある。

 直充は日誌を鞄へ入れた。

 その上から。

 ファスナーを閉めた。
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