シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「…………」

 直充は前を向いた。

 鞄の中には。

 古い日誌と。

 金色の懐中時計。

 今日。

 一つだけ。

 分かったことがある。

 あの日見たものは。

 ただの偶然ではなかったかもしれない。

 止まった針。

 リューズ。

 少し遅れて動いた針。

 まだ起きていない出来事。

 軽い眩暈。

 そして。

 抜け落ちたページ。

「…………」

「直充くん」

「はい」

「また考えてる」

「…………」

「今度は当たった?」

「……当たってます」

「やっぱり」

 梨来が少し笑う。

「でも」

「うん?」

「今は言えません」

「…………」

 梨来は直充を見る。

 少しだけ。

 間が空いた。

「そっか」

 それだけだった。

 直充が見る。

「聞かないんですか」

「言えないんでしょ?」

「はい」

「じゃあ、聞かないよ」

「…………」

「話したくなったら、話して」

 梨来が柔らかく笑う。

「そのとき聞くから」

「…………」

 直充はしばらく梨来を見た。

「……分かりました」

「うん」

 二人はまた歩き出す。

 梨来は知らない。

 直充が今日。

 何を見つけたのか。

 直充も知らない。

 梨来が。

 自分よりずっと大きな秘密を抱えていることを。

 それでも。

 昨日より少しだけ。

 互いのことを知ったと思っている。

 その距離のまま。

 二人は並んで歩いていく。

 直充の鞄の奥で。

 金色の時計が。

 小さく。

 時を刻んでいた。
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