シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
 古い資料室。

「…………」

 扉を開けると、古い紙と僅かな埃の匂いがした。

 前に来たときと、ほとんど変わっていない。

 窓から入る光の中に、細かな埃が浮いている。

 古い机と椅子。

 棚。

 段ボール。

 年代の分からない資料。

「…………」

 直充は扉を閉め、まず時計を見つけた場所へ向かった。

 奥の棚。その下。

 あの日、木箱があった場所。

「…………」

 しゃがむと、木箱はまだそこにあった。

 直充が手を伸ばして蓋を開ける。

「…………」

 空。

 当然だ。

 中に入っていた時計は、今、自分の鞄にある。

 直充は木箱を持ち上げ、底を見る。裏返してみても何もない。

「…………」

 元へ戻し、次は周囲の資料を見る。

 古いファイル。

 冊子。

 封筒。

 束ねられた紙。

 一つずつ確認していく。

「…………」

 十分。

 二十分。

 何もない。

 日誌の切れ端らしいものは見つからない。

「…………」

 直充は立ち上がり、腰へ手を当てて棚を見上げた。

「……上か」

 一番上には、使われていない資料が横向きに積まれている。

 直充は近くの踏み台を持ってきて乗り、上の資料へ手を伸ばした。

 一冊。

 二冊。

 降ろしていく。

 その奥に、古い封筒が見えた。

「…………」

 茶色く変色していて、宛名はない。

 直充が手に取る。

 軽い。

 けれど、中には何か入っている。

「…………」

 踏み台から降り、机へ向かった。

 封筒を置いて中を見る。

「…………」

 紙。

 一枚ではない。

 何枚か折り畳まれている。

 直充の目が細くなった。

 取り出してみると、紙の端が不自然に破れていた。

「…………」

 鞄を開け、昨日の日誌を出す。

 六月二十六日。

 途切れたページ。

 そこへ、見つけた紙の端を近づけた。

「…………」

 合う。

 破れた形が繋がる。

「……これか」

 直充は椅子を引いて座り、紙を開いた。

 最初の文字。

 ――もう一度――

「…………」

 日誌の最後から続いている。

 直充は読み始めた。

 ――もう一度、時計を動かしてみた。

 ――リューズを回した。

 ――今度は、前より少し多く回した。

「…………」

 直充の視線が止まる。

 次。

 ――すぐには何も起きなかった。

 ――やっぱり偶然だったのかと思った。

 ――でも。

 ――少しして、針が動いた。

「…………」

 ここも同じ。

 直充は続きを追う。

 ――前とは違った。

 ――見えたものが、すぐには起きなかった。

 ――最初は、時計が外れたのだと思った。

 ――けれど。

 ――一時間ほど経って。

 ――同じことが起きた。

「…………」

 直充の眉が寄る。

 一時間。

 前は、五分ほど先だった。
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