シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
「じゃあ、あとで」

「はい」

 直充が今度こそ廊下へ出る。

 数歩歩いたところで。

「直充くん」

 梨来が呼んだ。

 直充が振り返る。

「何ですか」

「…………」

 梨来は少し迷ってから、笑った。

「会えてよかった」

「…………」

 直充が梨来を見る。

 そして。

「俺もです」

 梨来の目が大きくなる。

「……え?」

「じゃあ」

 直充はそのまま歩いていく。

「…………」

 梨来は扉の前に立ったまま、動けなかった。

『俺もです』

「…………」

 胸の奥がじわっと熱くなる。

 梨来は直充が消えた廊下を見る。

「……ずるいなぁ」

 小さく呟いた。

 それからしばらくして、古い資料室へ入った。

 扉を閉める。

「…………」

 さっきまで直充がいた場所。

 棚。

 机。

 古い資料。

「…………」

 梨来の表情がゆっくり変わる。

 ここへ来た理由。

 事務の仕事。

 直充にはそう伝えた。

 けれど、本当は違う。
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