転生悪役令嬢が名探偵ですわ!?

12話 悪役令嬢、貴方怪しいですわ!?

 その夜。

 旧図書塔。

 誰もいないはずの部屋に、一人の人影が入った。

 月明かりの中。

 その人物は床にしゃがみ込み。

 血痕の残る場所を見つめる。

 そして。

 床の隅から、小さな何かを拾い上げた。

「…………」

 指先にあるのは。

 細い透明な糸。

 その人物は、それを握り潰す。

 ――パチン。

 小さな音。

 そして。

「……まだ見つからない」

 低い声が、誰もいない部屋に響いた。

 その人物は何事もなかったように立ち上がると。

 月明かりの届かない闇の中へ消えていった。

 残された部屋には。

 ただ一つ。

 赤い薔薇の香りだけが残っていた。
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