転生悪役令嬢が名探偵ですわ!?
4話 悪役令嬢、容疑者は私ですわ!?
「――アリア・フォン・ヴァルシュタイン」
名前を呼ばれた。
けれど、アリアは返事をしなかった。
できなかった。
目の前にあるものから、視線を逸らせない。
血。
床に広がった、赤黒い血。
その中心に倒れている少女。
桃色の髪が、血に濡れていた。
「……リリア」
アリアの唇から、かすれた声が漏れた。
つい数時間前。
教室で笑っていた少女だ。
『アリア様って、思ってたより面白い方なんですね』
そう言って笑っていた。
その笑顔が、もう動かない。
「……嘘でしょう」
思わず一歩、後ずさる。
胸元には複数の刺し傷。
制服は赤く染まっている。
そして、そのすぐそばには一本の短剣が転がっていた。
血に濡れた刃。
どう見ても凶器だった。
「被害者はリリア・フローレンス。死亡推定時刻は――」
教師の声が聞こえる。
しかし、アリアの耳にはほとんど入ってこない。
頭の中が真っ白だった。
前世では、殺人事件なんてテレビの向こう側の出来事だった。
刑事が現場に入り。
鑑識が証拠を集め。
探偵が犯人を追い詰める。
自分は安全なソファの上でポテトチップスを食べながら、
『あ、この人犯人じゃん』
なんて呑気に言っていた。
それが今は。
自分の目の前に、本物の死体がある。
「…………」
アリアは震える手を握りしめた。
怖い。
当然だ。
人が死んでいる。
しかも――。
「……私、容疑者なんですの?」
その呟きに。
「ええ」
教師が答えた。
「あなたは第一容疑者です」
「…………」
――その時。
アリアは、ふと窓の外へ目を向けた。
中庭にある大きな噴水。
その奥に広がる薔薇園。
「…………え?」
見覚えがあった。
どこで見たのか。
必死に記憶を探る。
そして――。
「……ゲーム」
呟いた瞬間。
頭の中に、姪が遊んでいたゲームの映像が蘇った。
この噴水。
この薔薇園。
この学園。
間違いない。
ここは、あのゲームの世界だ。
「...転生初日からハードモードすぎませんこと?」
「何を言っているのです?」
「こちらの話ですわ……」
そして教師が、床に落ちていた白い布を拾い上げた。
「これに見覚えは?」
「…………」
アリアの顔が引きつる。
白いハンカチ。
端には赤い薔薇の刺繍。
自分のものだ。
「……私のですわ」
周囲から、ざわめきが起こる。
「やっぱり……」
「アリア様が……」
「リリアさんと仲が悪かったものね」
違う。
そう叫びたかった。
確かに、この身体の持ち主――アリア・フォン・ヴァルシュタインは、リリアを嫌っていた。
少なくともゲームの設定上では。
ヒロインに嫌がらせをする悪役令嬢。
皇太子を奪われたことを恨み。
何度もリリアと衝突する。
そして最後には――破滅。
だが。
今のアリアは違う。
そもそも。
「そのハンカチ、三日前になくしましたわ」
「……三日前?」
「ええ。食堂へ行った時に落としたはずです」
「それを証明できますか?」
「…………」
できない。
証人もいない。
アリアは頭を抱えた。
「最悪ですわ」
「何がです?」
「証拠が私を犯人にしたがっていますもの」
「実際、かなり不利な状況です」
「冷静に追い打ちをかけないでくださいまし!」
名前を呼ばれた。
けれど、アリアは返事をしなかった。
できなかった。
目の前にあるものから、視線を逸らせない。
血。
床に広がった、赤黒い血。
その中心に倒れている少女。
桃色の髪が、血に濡れていた。
「……リリア」
アリアの唇から、かすれた声が漏れた。
つい数時間前。
教室で笑っていた少女だ。
『アリア様って、思ってたより面白い方なんですね』
そう言って笑っていた。
その笑顔が、もう動かない。
「……嘘でしょう」
思わず一歩、後ずさる。
胸元には複数の刺し傷。
制服は赤く染まっている。
そして、そのすぐそばには一本の短剣が転がっていた。
血に濡れた刃。
どう見ても凶器だった。
「被害者はリリア・フローレンス。死亡推定時刻は――」
教師の声が聞こえる。
しかし、アリアの耳にはほとんど入ってこない。
頭の中が真っ白だった。
前世では、殺人事件なんてテレビの向こう側の出来事だった。
刑事が現場に入り。
鑑識が証拠を集め。
探偵が犯人を追い詰める。
自分は安全なソファの上でポテトチップスを食べながら、
『あ、この人犯人じゃん』
なんて呑気に言っていた。
それが今は。
自分の目の前に、本物の死体がある。
「…………」
アリアは震える手を握りしめた。
怖い。
当然だ。
人が死んでいる。
しかも――。
「……私、容疑者なんですの?」
その呟きに。
「ええ」
教師が答えた。
「あなたは第一容疑者です」
「…………」
――その時。
アリアは、ふと窓の外へ目を向けた。
中庭にある大きな噴水。
その奥に広がる薔薇園。
「…………え?」
見覚えがあった。
どこで見たのか。
必死に記憶を探る。
そして――。
「……ゲーム」
呟いた瞬間。
頭の中に、姪が遊んでいたゲームの映像が蘇った。
この噴水。
この薔薇園。
この学園。
間違いない。
ここは、あのゲームの世界だ。
「...転生初日からハードモードすぎませんこと?」
「何を言っているのです?」
「こちらの話ですわ……」
そして教師が、床に落ちていた白い布を拾い上げた。
「これに見覚えは?」
「…………」
アリアの顔が引きつる。
白いハンカチ。
端には赤い薔薇の刺繍。
自分のものだ。
「……私のですわ」
周囲から、ざわめきが起こる。
「やっぱり……」
「アリア様が……」
「リリアさんと仲が悪かったものね」
違う。
そう叫びたかった。
確かに、この身体の持ち主――アリア・フォン・ヴァルシュタインは、リリアを嫌っていた。
少なくともゲームの設定上では。
ヒロインに嫌がらせをする悪役令嬢。
皇太子を奪われたことを恨み。
何度もリリアと衝突する。
そして最後には――破滅。
だが。
今のアリアは違う。
そもそも。
「そのハンカチ、三日前になくしましたわ」
「……三日前?」
「ええ。食堂へ行った時に落としたはずです」
「それを証明できますか?」
「…………」
できない。
証人もいない。
アリアは頭を抱えた。
「最悪ですわ」
「何がです?」
「証拠が私を犯人にしたがっていますもの」
「実際、かなり不利な状況です」
「冷静に追い打ちをかけないでくださいまし!」