転生悪役令嬢が名探偵ですわ!?

6話 悪役令嬢、まずは聞き込みですわ!?

 しばらくして。

 事件当時、現場周辺にいた人物、
被害者と関係の深かった人物が集められた。

 アリアは彼らを順番に見つめる。

 まず、一人目。

 金髪の青年。

 この国の皇太子――エドワード・アルベルト。

「リリア様の婚約者ですのね?」

「あ..ああ」

「事件当時は?」

「王宮にいた」

 即答。

「証人は?」

「執務官、それから数名の侍従がいる」

「なるほど……」

 アリバイがある。

 しかもかなり強い。

「……保留ですわ」

「保留?」

「まだ信用していませんもの」

「君は本当に容赦がないな」



 二人目。

 銀髪の青年。

 リリアの弟――セドリック・フローレンス。

生徒会長でもある。

「姉さんは……」

 セドリックは拳を握っていた。

「本当に殺されたんですか」

「残念ながら」

 セドリックは目を伏せた。

「事件当時は?」

「生徒会室です」

「証人は?」

「生徒会役員が数人」

 こちらもアリバイがある。

「お姉様とは仲が良かった?」

「……はい」

 短い返事。

「殺す理由は?」

「ありません」

 アリアは首を傾げた。

「即答ですわね」

「姉を殺す理由なんて、あるはずがない」

 その声には強い感情があった。

 アリアはそれ以上聞かなかった。



 三人目。

 茶色の髪。

 穏やかな顔立ち。

 リリアの幼馴染――カイル・アシュフォード。

「最後にリリアさんと会ったのは?」

「一昨日です、一緒に下校して少し談笑を」

「彼女に変わった様子は?」

「いつも通りよく笑っていました」

 笑顔。

幼馴染が殺されたというのに。

 優しい笑顔。

 ――完璧な笑顔。

「...そう」



 そして最後。

「トーマス・ベルです!」

「……」

 元気よく名乗った男子生徒。

第一発見者だ

 アリアは彼を見た。

「あなたは?」

「ただの生徒です!」

「事件当時は?」

「旧図書塔の近くを歩いていました!」

「なぜ?」

「散歩です!」

「……」

「……」

「この学園、もっと散歩に適した場所があるでしょう」

「俺だってそう思いますよ!」

 アリアはため息をついた。

「動機は?」

「ありません!」

「アリバイは?」

「ありません!」

「潔いですわね」

「褒められてます!?」

 少なくとも。

 今のところは全員が怪しい。



 四人を見終えたアリアは、事件現場へ戻った。

 誰もいなくなった部屋。

 静寂。

 血の匂い。

 リリアの遺体は運び出されている。

 残された、血痕。

「…………」


 アリアは扉を見る。

 窓を見る。

 そして、天井。

「密室……」

 誰が。

 どうやって。

 何のために。

 そして、なぜ――。

「私のハンカチを使った?」

 その疑問が、妙に引っかかった。

 犯人は私に罪を着せようとしている。

 わざわざ三日前に失くしたハンカチを使って。

「犯人は、私のハンカチを拾った人物……?」

 アリアは立ち上がった。

「なるほど」

 口元に、笑みが浮かんだ。

「面白くなってきましたわ」

 転生初日。

 まさか自分が、殺人事件の謎を追うことになるとは思わなかった。

 けれど。

 悪役令嬢として破滅する未来を変えるためにも。

 そして何より。

 理不尽に殺された少女のためにも。

「犯人さん

この名探偵アリア・フォン・ヴァルシュタインが――」

 ニヤリと笑う。

「必ず暴いて差し上げますわ」

 ――しかし。

 この時のアリアはまだ知らなかった。

 この密室には。

 彼女が想像している以上に巧妙な仕掛けが施されていることを。
< 6 / 20 >

この作品をシェア

pagetop