転生悪役令嬢が名探偵ですわ!?

8話 悪役令嬢、謎が多すぎるますわ!?

「鍵がかかっているように見せる方法……」

 アリアは部屋の中を歩き回る。

 窓は無理。

 扉も無理。

 換気口は人間が通れるほど大きくない。

 なら。

「犯人はどこから出た?」

 考える。

 考える。

 考える。

「…………」

 前世の記憶が蘇る。

 密室トリック。

 鍵のすり替え。

 合鍵。

 糸。

 針金。

 マグネット。

「魔法……」

 この世界には魔法がある。

 しかし、魔法にも制限がある。

 生徒が使える魔法で、遠くから鍵を操作できるものはない。

「では魔法ではない?」

 アリアは机を調べる。

 何もない。

 本棚。

 何もない。

 床。

 血痕以外には――。

「…………?」

 細い傷。

床に一本。

 扉の近くから、部屋の中央へ伸びている。

「これは……」

 アリアはしゃがみ込んだ。

 傷はごく細い。

 何かを引きずった跡。

 だが、普通の靴跡ではない。

「糸……?」

 その瞬間。

「アリア様!」

 扉の向こうから大声がした。

「うわっ!」

 アリアが飛び上がる。

「誰ですの!?」

「僕です!」

「誰!?」

「トーマスです!」

「ああ、第一発見者のモブA!」

「モブAってなんですか!」

 トーマスが息を切らしながら入ってくる。

「何ですの?」

「騎士団の人たちが呼んでます!」

「今行きますわ」

 アリアは立ち上がる。

 しかし、その前にトーマスが口を開いた。

「あ、そういえば」

「?」

「僕、死体を見つけた時――」

 アリアが振り返る。

「何か見たんですの?」

「はい」

「早く言ってくださいまし!」

「扉の前に、誰かいました」

「…………」

 空気が変わった。

「誰?」

「分かりません」

「顔は?」

「見えませんでした」

「どんな人でした?」

トーマスは必死に思い出す。

「たぶん男です」

「身長は?」

「俺より高かったです」

「髪は?」

「……分かりません」

「服装は?」

「……分かりません」

「役に立たないですわね」

「酷い!」

 アリアは考える。

 第一発見者であるトーマスが現場へ来た時。

 誰かがいた。

 その人物は何をしていた。

「……なぜ?」

 そして。

「なぜ扉の前に?」

トーマスより先に犯行現場にいたとすれば

第一発見者になるはず。

 アリアは再び部屋を見渡した。

 窓は閉まっている。

 なら。

 アリアは呟く。

「..逃げたってこと?」

 その時だった。

 廊下から騎士団の声が聞こえた。

「アリア・フォン・ヴァルシュタイン!」

 呼ばれている。

「行かなければなりませんわね」

 アリアは部屋を出る。

 しかし。

 最後に一度だけ振り返った。

 窓。

 扉。

 床。

 そして――。

「……糸」

 小さく呟いた。
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