先輩の愛に溺れる。
静かな図書室に、数秒の沈黙が落ちる。
やがてレオネルはふっと息をつき、困ったように笑った。

「本当に手ごわいですね」

その目は冗談めいているのに、奥にはまだ諦めない色が残っていた。

「今日は退きましょう。ですが、セレナ嬢」

名前を呼ばれて、セレナは小さく肩を揺らす。

「あなたが助けを必要としたときは、私も力になれます。そのことだけは覚えておいてください」

そう言い残し、レオネルは静かに去っていった。

扉が閉まる音がして、図書室にふたりきりの静けさが戻る。

すると次の瞬間、ルシアンがセレナを強く抱き寄せた。

「っ、ルシアン……?」

「怖かった」

耳元に落ちた声は、思っていたよりずっと切実だった。

「お前を奪われるかと思った」

セレナははっとして、彼の背中にそっと腕を回す。

「大丈夫です」

「大丈夫じゃない」

すぐ返ってきたその声は、嫉妬と不安が混ざって少しだけ震えていた。

「お前の秘密を知るやつが増えるほど、手を伸ばしてくるやつも増える」

ルシアンは少しだけ体を離し、セレナの顔をのぞきこむ。
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