先輩の愛に溺れる。
放課後。
学園のはずれにある旧図書塔は、今はほとんど誰も使っていない。

重い扉を開けると、薄暗い部屋の奥でルシアンが待っていた。
窓から差しこむ夕暮れの光が、彼の横顔をやわらかく照らしている。

「来たか」

「大事な話って何ですか?」

そう聞いた瞬間、ルシアンの表情が少しだけ真剣になった。

「今日、魔力測定の結果が教師会に届いた」

セレナの心臓が止まりそうになる。

「お前、抑えてたな」

セレナは息をのんだ。
やっぱり知られてしまったのだ。

逃げなきゃ。
そう思ったのに、足が動かなかった。

ルシアンは静かにセレナの前に来ると、そっと頬に触れた。

「そんなに怯えるな。俺は誰にも言わない」

「でも……もし知られたら……」

「知られないように守る」

低くてまっすぐな声だった。
その一言だけで、泣きそうになるくらい安心してしまう。

「どうして……そこまでしてくれるんですか」

するとルシアンは、少し困ったように笑った。

「まだ気づかないのか」

彼の指先が、セレナの髪をひとすじすくう。

「俺はずっと、お前だけ見てる」

セレナの呼吸が止まった。

「入学した日からずっと。誰にも取られたくないくらい、大事に思ってる」

「せ、先輩……」

「お前が隠したい秘密ごと、全部守りたい」

その言葉は甘いのに、ひどく真剣だった。
冗談なんかじゃないと、すぐにわかった。
< 3 / 35 >

この作品をシェア

pagetop