先輩の愛に溺れる。
セレナの胸の奥で、閉じ込めていた気持ちがふるえる。
本当はずっと、彼が近づくたびに嬉しかった。名前を呼ばれるたび、特別になれた気がしていた。

「私も……先輩のこと……」

そこまで言った瞬間だった。

旧図書塔の床に、黒い魔法陣が広がった。
重たい闇の気配が部屋を包みこむ。

「っ、後ろに下がれ!」

ルシアンがセレナを抱き寄せる。
次の瞬間、闇の中から魔獣が現れた。

鋭い爪を振り上げ、二人に飛びかかる。
ルシアンは片手で結界を張ったが、相手は強い。古い封印が壊れかけているのだとすぐにわかった。

「セレナ、目を閉じるな」

ルシアンの声が響く。

「お前の力を貸せ。俺が全部受け止める」

その言葉に、セレナは震えながらもうなずいた。
隠していた星の魔力を、はじめて解放する。

彼女の手のひらから、まばゆい銀の光があふれた。
それは夜空の星を集めたみたいに、美しくやさしい光だった。

ルシアンの深い青の魔力と、セレナの銀の光が重なる。
二つの力はひとつの大きな結界となって、魔獣を包みこんだ。

やがて闇は音もなく砕け、光の粒になって消えていった。

静けさが戻る。
けれどセレナは立っていられず、ふらりとよろめいた。
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