先輩の愛に溺れる。
「その質問に答える必要、ありますか」

低く、よく通る声が響く。

振り向くまでもなかった。
ルシアンだ。

人混みをまっすぐ割るように歩いてきた彼は、いつも以上に静かな顔をしていた。
けれどその青い瞳の奥には、はっきりと熱がある。

セレナの隣まで来ると、ルシアンは迷いなく彼女の腰を引き寄せた。
ぴたりと体が密着して、セレナの息が止まりそうになる。

「る、ルシアン……!」

周囲が一気にどよめく。
けれどルシアンは気にする様子もない。

「ひとりにして悪かった」

耳元でそう囁いてから、セレナを抱いたままレオネルを見る。

「殿下。何度も言わせないでください」

レオネルはわずかに目を細めた。

「私は彼女本人の意思を聞こうとしただけですよ」

「なら、なおさら余計なお世話です」

ルシアンの腕にこもる力が少しだけ強くなる。
それは苦しくないのに、逃がさないという意志だけがはっきり伝わってきた。
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