極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~
「当然もう済んでいるでしょうけど、今度の法要のお車割り、確認はできているわよね?」
「はい。伯父様ご夫妻は本館前へ、叔母様方は別邸へお回しする予定です。紫乃さんのお車も、到着時間に合わせて正門へお付けしますね」
把握している予定を伝え、紫乃さんへの配慮も加えて伝える。
私からの返答が予想外だったのか、紫乃さんは「そ、そう」とそれ以上は言ってこなかった。
友人とランチには行くくせに、家のことはしっかりできていないと思われたら、私の立場はますます悪くなる。ここの空気を吸うことすら罪悪感に苛まれることになるだろう。
私のことが嫌いな紫乃さんには、事あるごとにこうして試され、そして嫌みを言われている。
「では、失礼するわ」
「はい、お気をつけて」
紫乃さんの華奢なヒールが大理石の床を鳴らして離れていく。
「あ、そうそう。言い忘れてたわ」
紫乃さんは足を止め、踵を返す。会話が終了し、気が抜けかけたところで戻ってきた紫乃さんに再び緊張が押し寄せた。
「もうすぐお兄様が帰国するの、聞いているかしら」
「えっ……?」
まったく情報のない話に固まる。創史さんが帰国するなんて話、どこからも入ってきていない。もちろん、創史さん本人からの連絡もない。