極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~
成功を収めている一条家は黒川家と親交も深く、冴華さんと創史さんの結婚も現実的だった。
一条家と桜庭家は、代々対立を続けてきた名家同士。
桜庭家が没落し、一条家が新規事業を引き継いだことで、両家の勝敗は決したかに思われた。もちろん、決まっていた創史さんとの婚約も、冴華さんに取って代わるだろうと誰もが思っていた。
しかし、驚くことに創史さんは婚約を破棄することはなく、私との結婚を選んだのだ。
紫乃さんは創史さんが私と婚姻を結んだことを今も尚、納得していないだろう。
「そうだわ、美莉さんにも見せてあげようと思って」
紫乃さんは傍らのハンドバッグから雑誌らしきものを取り出す。海外誌と思われるものをパラパラとめくり、目的のページを見つけると差し出した。
「お兄様と冴華さん、いい写りよね」
見せられたのは、アメリカの経済誌のとある記事。誌面に載る創史さんの姿が目に飛び込んでくる。同時に、そのとなりの冴華さんも目に映った。
これは……?
慈善パーティーかなにかのようだ。写真下の英文に目が留まる。
【Kurokawa Heir Apparent Appears with His Beloved Wife】(黒川家の次期当主、最愛の妻と共に登場)
どくんと心拍が乱れる。
雑誌には、創史さんの妻は冴華さんだと紹介されている。
誌面に釘付けにされていると、雑誌はパッと閉じられた。その向こうには、紫乃さんの満足げな微笑が見える。
「冴華さん、お家の事業にも積極的に関わられているようだから。同じタイミングでアメリカにいらしたみたいね。ほんとお似合い」
紫乃さんは、ふたりが夫婦と掲載されているこの記事を私に見せたかったのだ。
「食事会の最終確認に向かいますので、失礼します」
これ以上この場に留まる気になれず、話を切り上げるようにしてぺこりと頭を下げ、その場を後にした。