極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~
「お兄様、お帰りなさい! 早かったのね」
ダークグレーのスリーピースを着こなす長身に釘付けにされる。
一年ぶりに顔を合わせる創史さんは、いつにも増して凛として気高く、長旅で時差があった人とは思えない。
渡米して得てきた多くのものが、彼をそう見せているのかもしれない。
「出迎えられなくてごめんなさい」
咄嗟に謝罪の言葉が出てきたものの、創史さんは「いや」と制する。
「知らせていた時刻より早まったんだ。俺が勝手に早く帰っただけ」
創史さんは書斎に入ってくるなり、なにかに気づいたような表情を浮かべる。
「香りを変えたのか」
「そうなの! お兄様、前のほうが気に入られていたわよね?」
私が返事するよりも先に紫乃さんが口を挟む。
「いや、このほうが今の気分には合うな。帰国してしばらくここにこもることになりそうだから、落ち着く香りだ」
創史さんの感想を聞き、心の中で『よかった……』と呟く。
「紫乃、少し外してくれ。美莉とふたりきりで話したい」
創史さんに書斎を出るように言われた紫乃さんは、「わかりました」と少し声のトーンを落として扉を出ていく。
書斎には、創史さんとふたりきりになった。