極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~
「伺いもせず、勝手に香りを変えてしまってごめんなさい」
もしかしたら、紫乃さんの手前、そう言ってくれたのかもしれないと思い謝る。
創史さんは私の目の前までやって来ると、「いや」と口を開いた。
ふわりと、創史さんが愛用している香水のエキゾチックな香りが鼻をくすぐる。
「謝ることはなにもない。落ち着く香りで悪くない」
全否定されなかっただけでも幸い。
顔を合わせても、冷たくあしらわれるのだろうと覚悟していたから……。この反応なら、想像よりはましなほうだろう。
「それなら、よかったです」
そう言うので精一杯。今になって、余計なことをしたと後悔も膨らんでいく。妻として認められていないのに、しゃしゃり出た真似をしてしまったかもしれない。
「お帰りなさい」
改めて無事な帰国を喜ぶ。
創史さんは切れ長の目尻を少し下げ「ただいま」と微笑した。