極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~
「お疲れだと思いますが、夕方から食事会を予定しています。お祖父様、ご両親、紫乃さんと、みなさん集まられます」
「ああ、準備をしてくれてありがとう。大変だったろう」
「いえ。創史さんの帰国を皆さん心待ちにしていましたから」
「美莉は?」
突然、彼の手に捕まり、綺麗な顔が近づく。
「俺は美莉に、一番心待ちにしてほしいから」
急に迫られて、鼓動が驚いたように打ち始める。目を逸らすことは許されず、創史さんは「美莉?」と私の答えを求める。
なにも気にすることなく、心配もなく、ただ創史さんを好きだという気持ちだけでいていいのなら、帰国はなによりも嬉しく心待ちにしていた。
でも今の私は、心待ちにしてはいけない存在──そう思って、離婚すら考えていて……。
受け止めなくてはいけない現実と、葬らなくてはいけない自分の本心の間で揺らぐのは苦しい。いつの間にか彼から目を逸らし伏せていた。
答えることができないでいると、掴まれた腕がぱっと放される。
「本館に向かおう」
創史さんはそれだけを言い、私を置いて静かに書斎を出ていった。