極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~


「創史、ニューヨークはどうだった」

 上席からお祖父様が訊く。

 今はもう静かに暮らしている重鎮も、黒川家の次期当主の活躍は目が離せないに違いない。

 創史さんは箸を止め「はい」と顔を向ける。

「問題なく終わりました」

 言葉短く、簡潔に答える。

 創史さんは昔から、家族と話していても多く感情を出さない。子どもの頃から両親をはじめ、祖父母にも一定のトーンで話している印象が強い。

 思いっきり笑ったり、激しく怒ったり、子どもらしいそういう姿を見せなかった。

 黒川家に生まれた者として、何事にも動じない精神が備わっているのかもしれない。

 そんな創史さんに、お祖父様も当たり前のように「そうか」と微笑むだけで会話は成立する。

 次に運ばれてきた前菜は、稚鮎の南蛮漬け、空豆蜜煮、車海老芝煮、そして蓬麩田楽。これにはお祖父様も「美味しそうだな」と笑顔を見せてくれている。

 お祖父様にも気に入ってもらえたようで内心ホッとした。

 続いて蛤真丈のお吸い物が並び、帰国祝いの意味も込めた縁起のいい汁物をいただく。

 創史さんの横顔がわずかに緩み、久しぶりの家の味を楽しんでくれているのを感じ取れた。

「今日は、創史の好きなものが多いわね」

 黒川家の古い蒔絵の器にのって出てきたお造り、本鮪と縞鯵、牡丹海老の三種が出てきたところでお義母様が口を開いた。

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