極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~
「長旅でお疲れだと思って、料理長と相談しまして──」
「お兄様、昔はもっと濃い味を好まれていたのに」
お義母様の言葉に反応した私の声を、ワイングラスを傾ける紫乃さんが遮る。食事の席に沈黙が落ち、緊張が走った。
「すみません……」
場の空気に耐え切れず、謝罪が口をついて出る。
となりの創史さんが「いや」と口を開き、全員が彼に注目した。
「今はこのほうが落ち着く」
創史さんの静かな言葉が、再びその場にいる人々の食事を再開させる。
あからさまに私を庇った発言ではないけれど、その言葉に救われる。この場に留まってもいいと言われたような気分だ。
コース料理は魚料理へと進む。
焼き物は、甘鯛の鱗焼き、山椒ソース。ここまで和の要素で進んできたコースに、少しだけ洋の要素が入る。
やがて食事の席での話題は、お義父様が出したニューヨークでの財団関係の話となる。