極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~
「はい、どうぞ」
仕事は一段落したのだろうか。鏡台を立ち上がり、「お疲れ様です」と声をかける。
「どうして、こっちの部屋に?」
創史さんは顔を見せるなり、私がこのあまり部屋のほうにいることを尋ねる。私がこの部屋で過ごしていたことを知らないからだろう。
「特に、理由はないのですが、こっちの部屋のほうがなんだか落ち着いて……」
ごまかすように言ったものの、創史さんにじっと見つめられ、話題を変えるように「お仕事は、もう?」と訊く。
「ああ、一区切りついた」
「そうですか。お疲れでしょうから、早めにお休みになってください」
「ありがとう。それより、体調でも優れないのか」
目の前まできた創史さんが、心配そうな顔で私をじっと見つめる。
「体調……いえ、特には」
「食事も残していたし、元気もなさそうに見えた。出迎えで気を使わせたから、疲れただけとかならいいが、気になって」
固まった気持ちを伝えるなら、今ではないだろうか──。
冷静な自分が心の中で囁く。
これを逃したら言い出す機会に恵まれないかもしれないと、勢いのままに口を開いた。