極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~
「創史さん、お話があります」
さっきまでと違う重めなトーンで話を切り出した私に、創史さんは「話……?」と続きを待つ。
心臓の拍動が大きく主張していく。静寂に包まれる部屋の中、激しくなっていく鼓動だけを聞いていた。
「私たち、離婚しましょう」
言った。言えた──。
尋常じゃないほど心臓が高鳴っている。それだけ重みがあり、ダメージの大きい言葉だというのを思い知る。
創史さんはじっと私を見つめたまま。その端整な顔を逸らさず見つめ返す。
数秒が経つと、なぜか目尻を下げて微笑した。
「今、なんて? 離婚なんて聞こえたのは気のせいだとは思うが」
「気のせいじゃありません」
食い気味に答える。その瞬間、創史さんの表情からすっと笑みが消えていく。
「美莉、自分がなにを言っているのかわかっているのか」
「わかっています。そんな軽い気持ちで出す言葉でないことも、もちろん承知の上です。それでも、伝えなくてはいけないと思って」
「ちょっと待ってくれ。それならなぜ?」
私がこう申し出る原因がわかっていないあたり、彼はまったく問題がないと思っているようだ。
問題がなかったというよりは、この期間、ふたりの間にはなにもなかった。